2013年9月28日土曜日

「自然の権利訴訟」第16回公判の報告


 去る4月10日(水)山口地裁にて第16回公判が開かれました。その内容をご報告させていただきます。

 前回までしばらくの間は、訴訟が終結するかもしれないという情勢の推移を見極めるため、法廷でのやり取りは休眠状態でした。しかし、今回から実質的な弁論が再会となります。

■二つの裁判の位置づけ
 少し整理しますが、この自然の権利訴訟は現在、後から追って提訴したものを含め二つの土俵で闘っています。法廷用語では平成20年第20号事件と、平成24年第13号事件と区別されているのですが、前者は県知事による埋立免許交付の手続きには重大な瑕疵があって無効だと主張するもの、後者は仮に有効であったと仮定してみてもその効力はすでに失われていると主張するものです。
 今回は第13号事件の方で原告側から、なぜ免許の効力が失われているのかということについて主張が行われました。

■失効の条件は法に明確に規定されている
 公有水面埋立法第34条は、期間内に埋立に関する「工事の著手」又は「工事の竣功」をしない場合には、免許はその効力を失うと規定しています。ご存知のように、これまでに行われたのは「ブイの設置」のみなので、これでは着手にはあたらず、まして竣功にもあたりません。よって期限を過ぎた今や免許の効力は失われているというのが原告の主張です。至極まっとうな考え方です。
 さて、この第34条には但し書きがあります。大目にみてあげてもいい何か特別な事情がある場合には、3ヶ月以内に限って免許の効力を復活させてあげるコトができるのというのです。中国電力に対して大目にみてあげてもいい事情があるかどうかはさておき、この救済策を適用するにしても、その期限である3ヶ月という期間はすでに過ぎてしまいました。この間、免許の復活のための手続きに該当する行為は何も行われていません。この点でも失効の事実は否定し難いといえます。
 漫画「北斗の拳」風にいえば、「免許はもう、死んでいる、、」のです。

■言い逃れの根拠を示せ
 これまでにも何度か紹介していますが、この間の被告代理人の主張は、期間満了を目前にして中国電力が免許の更新を申請し、県が受理しているので、「(処分はなくとも)免許はまだ有効である」というものです。内閣法制局がかつてそういった解釈を示す通達を出したことがあるというのがその根拠とされています(昭和28年3月18日法制局一発第26号「公有水面埋立免許の効力について」)。
 しかし、この点に関しても詳細を明らかにするよう原告側から求めました。すなわち、法のどの部分を解釈することでそのような理解が得られるのか、さらに、今回の件に関して同通達を援用することが適切なのか、まったく不明のままなのです。
 加えて、あとで高島さんから教えていただいたことですが、法廷から一歩外へ出て県議会の答弁では、県知事は通達の「つ」の字も口にしないそうです。そして、あとの取材の時にだけ記者に向かってこっそり通達のことを言うのだそうです。この辺もどうもあやしい、、何かヨコシマな下心があるように感じられます。本当に根拠のあることならば、議会の場でも堂々と通達のことを根拠として述べればいいはずです。
 いずれにせよ、「通達」は「法」を超えるものではなく、法に失効の条件が明確に示されている以上、それを曲げることはおかしいというのが原告の主張でした。

■入り口の話でゴネようとする被告
 さて一方で、被告代理人が主張したのはまったく別の話で、原告適格をめぐるものでした。埋立地の上に何が建つかは問題ではなく、埋め立てによって直接影響を受ける人に原告を限定すべきだというのです。
 しかし、この考え方は簡単に否定できると籠橋弁護士はいいます。というのは、アセスメントでは大気汚染の影響も調べるように義務づけられていて、そこから埋立地の上に建つものの影響をある程度は考慮しなければならないという暗黙の了解を導くことができるからだそうです。

■工事機材が撤収される!
 さて、報告集会において現地の動きとして少しうれしいお知らせがありました。それは、中国電力が田ノ浦の浜に展開していた埋立のための機材を撤収するというものです。同時にプレハブ小屋やガードマンの撤収の動きもあるそうです。
 もちろん、これは計画を完全に断念したということではなく、再開が見通せない中で資材を遊ばせておくムダを避けるためだけなのかもしれません。けれど、田ノ浦が少しでももとの姿に近づくことはたいへんよろこばしいことです。できれば、このまま計画を断念させることろまで、みんなの力で持っていきましょう。

文責:小坂勝弥(原告の一人・京都在住)

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