2013年9月28日土曜日

「自然の権利訴訟」第15回公判の報告


 去る2月15日(金)山口地裁にて第15回公判が開かれました。それ以前の流れにも少しさかのぼりながら、公判の内容をご報告させていただきます。

■勝利宣言のはずが、、
「今日はホントは勝利宣言のはずだったんだけど、、」
行きの電車で偶然お会いした籠橋弁護士が車窓の景色を眺めながら、ため息まじりにそう言われました。

 昨年10月6日をもって、山口県が中国電力に交付した埋立免許が期限を迎えることから、その効力は一旦失効してしまうハズでした。この裁判が目的としていた免許の「取り消し」が自動的に実現するため、訴えの利益が消失し、原告が訴えを取り下げるか、裁判所が訴えを棄却するか、いずれかの形で裁判は終結するハズだったのです。あとはどういう形で原告の主張の正当性をアピールしようかと、そのことだけに腐心してこの日を迎えたかったというのが私たちの本心でした。

■一転、闘いは継続へ
 しかし、自民党の復権によって風向きはガラリと変わってしまいました。ありえないとされていた新規立地計画は条件次第で復活するかもしれない可能性を残すことになったのです。

 中国電力はその変化を見越して、期限ぎりぎりの10月5日に免許の延長を申請し、申請が却下されるまでは法的に免許は失効しないと言い出しました。そして、それに呼応して、免許の延長は認めないとしていた山本知事も態度を一転、直ちに却下はせず、いたずらに判断を引き伸ばすという策に出たのです。政権によるゴーサインを待っているのは明らかです。

 しかし、さすがの自民党政権ですら再び新規立地を認めることには慎重になっています。こうして今も、免許が失効したことが確認されない中途半端な状況が続いています。

 今回、法廷においては双方とも新たな主張を行いませんでしたが、その代わり、訴訟は終結させず、今後も争い続けるということが確認されたのでした。

■山口県は速やかに申請を却下せよ
 山口県の姿勢に抗議するために、公判に引き続き、となりの林業会館において「抗議集会」が行われました。「自然の権利訴訟弁護団・原告団」と「埋立免許差し止め訴訟弁護団・原告団」の連名による抗議声明が発表されました。県はいたずらに判断を引き延ばすのを止め、ただちに申請を却下し、免許が失効したことを宣言するよう求めるものでした。
 
 祝島島民の会から山戸孝さんが「原発が本当に必要であるならば、姑息な方法によらずとも、もう一度免許の取得からやり直せばいいのであって、山口県が事業者に肩入れするような姿勢を続けるのはおかしい」と訴えられました。まったくその通りだと思います。

■問われる山口県の主体性
 引き続き報告集会が行われました。印象深かった点を紹介させていただきます。各地で原発をめぐる裁判はたくさん取り組まれていますが、埋立免許という早い段階を問題にしている裁判はほとんどありません。ここにこの裁判の重要な意義があります。

 これまで「安全審査はいずれ国によってなされるから」という理由で自治体による安全審査は行われずに埋立免許が交付されてきました。そうして埋め立てが進み、既成事実が先行してから安全審査が行われるのが通例でした。

 しかし、既成事実ができ上がっている段階で厳格な安全基準を適用することは困難です。実際のところは、現状にあわせて基準の方のつじつまをあわせるという本末転倒がまかり通ってきました。これが本来適地などほとんど存在しないはずの日本において、これほど多くの原発が林立している背景をなしています。

 この裁判は、そういった既成事実先行のやり方を根底から問い直し、自治体が責任をもって主体性を発揮することで、そういった構造の歯止めになり得たし、これからもなり得るのではないかということを訴える意味があるというのです。今後とも、改めまして、ご注目をよろしくお願いします。

文責:小坂勝弥(原告の一人・京都在住)

0 件のコメント:

コメントを投稿