2012年9月1日土曜日

第12回公判の報告


「自然の権利訴訟」第12回公判の報告

6月13日(水)山口地裁にて第12回公判が開かれました。今回も祝島島民の方たちによる埋立免許取り消し訴訟と同じ日程で、30名ほどの人たちが傍聴に参加してくださいました。公判の内容についてご報告させていただきます。

■県知事は安全性について独自に判断をしていない
 今回の主張の柱は「県知事は埋立免許の交付にあたって、将来原発が建設される際に確認されなければならない安全性について、独自に何ら判断をしておらず、それは違法だ」ということです。

■安全審査はいつ行われるべき?
 原発が建てられるまでには、電源開発基本計画への組み入れ〜公有海水面の埋立〜原子炉設置許可、、と、いくつもの手続きがあり、何がどの段階でどう審査されるかということが一応決まっています。

 安全性については原子炉設置許可申請が出された段階で保安院が審査することになっていますが、そのためにその前段階ではなおざりにされてしまっているのが実状です。

 しかし、後で審査されるからといって、それまで放ったらかしにしてしまってホントにいいのでしょうか。

■一度始めてしまったら取り返しがつかない
 本件原告団がこれまで再三にわたって主張してきたように、自然生態系は多様な生物の繊細な結びつきによって成り立っているため、海の埋め立てや森林の伐採などによって、一度壊されてしまうともう簡単に戻ることはありません。

 そして、地域社会の自立性というものも同じような繊細さをもっています。ひとたび原発マネーが入り込み、それを充て込んだ利害関係が網の目のように張りめぐらされてしまうと、後戻りすることはたいへん難しくなってしまうのです。

 つまり、一度始めてしまったらもう取り返しがつかないのです。ならば、始める前の段階で、安全性に関する審査は当然なされるべきではないでしょうか。

■日本の原発がかかえる根源的な問題
 立地に際して幾多の反対運動が起こってきた日本においては、これまで原発の用地選定は交付金によって地域の反対が押さえ込めるか否かが最重要視され、安全性の問題は常に後回しにされてきました。

 上述のように、他の手続きが先行することは後戻りを不可能とし、結果的に安全性の確保はないがしろにされてきました。現状にあわせて後から基準が変更されたり、安全神話に依存して事故は起こらないものと決めつけられたりしてきたのです。

 今回の当方の主張は、こういった日本の原発がかかえる根源的な問題を改めて提起するものでもあります。

■非居住地区や低人口地帯の設定
 さらにもうひとつ、日本の原発がかかえてきた根源的な問題があります。それは、「原子炉立地審査指針およびその適用に関する判断のめやす」が求めている、非居住地区の設定、低人口地帯の設定、集団線量を許容範囲に抑えられる距離の確保などがきちんと守られていないことです。

 危険は十分に隔離されなければならないという主旨ですが、これらの条件を遵守するならば、そもそも国土が狭く人口密度が高い日本において原発を建てることはほとんど不可能なことなのです。しかし、建てることを優先するために、「事故は起こりえない」ことを前提とする安全規制のあり方がまかり通ってきました。

果たしてそれでよかったのか、、今回の福島第1原発事故の影響を見れば明らかです。仮に指針が求めるような危険の隔離がきちんと守られていたのであれば、今回の事故の影響はもっと小さくて済んだはずです。

 このことの違法性をどう考えるかは、今回の事故をどう考えるかということとほとんど同義だといえるのではないでしょうか。

■原発が止まっている今だからこそ
 改めて思えば、国内すべての原発が止まっている中で当訴訟の公判が開かれるのはこの日が初めてでした。

 3.11以前であれば、日本のすべての原発に通底するような壮大な提起は、現状を追認する傾向の強い裁判所においては門前払いのような形で判断を避けられてしまう可能性が高かったと思います。

 しかし、多大な犠牲を経験し、日本の原子力政策の次の一歩がどちらに踏み出されるのかが真剣に考えられている今だからこそ、これまでの誤りを根底から問い直すことは避けて通れないはずです。いい加減な判断では国民は納得しない、という熱い視線を全国から送りましょう。

■次回の予定
次回の公判予定は、9月5日(水)11:30から

今回と同様、祝島の埋立免許取り消し訴訟が11:00からありますので、傍聴を希望される方は10:30までにお越しくださいませ。

文責:小坂勝弥(原告の一人・京都在住)