2012年5月18日金曜日

第11回公判の報告


「自然の権利訴訟」第11回公判の報告

3月21日(水)山口地裁にて第11回公判が開かれました。ようやく春らしい日差しが感じられるようになったこの日、前回と同様、祝島島民による埋立免許取り消し訴訟が予定されていたのに加え、建設予定地内にある土地の所有権を確認するいわゆる神社地訴訟も重なっていたため、同じ法廷で上関原発関連の裁判が3件たて続けに行われることと相成りました。

そのおかげか、60名を超える人が集まりました。入廷しては一旦退廷して入廷し直すという面倒な手続きの合間に、ガヤガヤした廊下において、いろんな関係者の顔を確認することができました。

「自然の権利訴訟」の順番は2番目。傍聴席が埋まっていることもあって、私は一応原告でもあるので、柵の内側の原告席のベンチに座らせていただきました。被告代理人をまっすぐに見据える、貴重な経験ができ感謝しています。

さて、公判の内容についてご報告させていただきます。

■事情の変更(前提がガラリと変わった)
おさらいになりますが、この裁判で争っているのは山口県が中国電力に与えた公有海水面の埋立免許が妥当かどうかということです。山口県は、国から原子炉設置許可が出されることを前提としてこの埋立免許を出したわけですが、それは3,11福島事故の前の常識を踏まえてのこと。

しかし、3,11事故が起こってしまったことによって原発をめぐるさまざまな常識がガラリと変わってしまいました。安全神話が崩壊し既存の安全基準が大きく見直されようとしています。また、エネルギー政策も原発依存からの脱却に向けて大きく舵を切ろうとしています。

こういった状況のもと、上関原発は新たにつくられる安全基準をクリアすることは難しいであろうこと、また、そもそも新規立地計画は撤回される見通しが強いこともあり、原子炉設置許可は出される可能性がない。そして、原子炉設置許可が出されることを前提に与えられた埋立免許なのだから、その前提が失われた以上、もはや無効である、というのが当方の主張でした。

■私たちが決めていくこと
公判後の報告集会において籠橋弁護士が言われました。

「裁判所が当方の主張をそのまま認めてくれるかどうかについては、必ずしも楽観していない。厳しいことは厳しいが、裁判所が安易に判決を出せない空気はある。それを背景にして突破していきたい!」

原子力政策がどう見直されるかは、まさに現在も流動的です。事故直後には新規立地なんてあり得ないという空気が支配的でしたが、原子力村のゾンビたちも巻き返しに躍起になっています。

私がここで強調したいのは、上関原発の原子炉設置許可なんか出されるハズがない、、かどうかは、法廷の外にいる人たちの世論が決めていくことになるということです。そして、そこにこそ多くの人たちの参加の機会があるということです。ぜひ、みんなでこの世論づくりのためにがんばりましょう。

■上関裁判の歴史
冒頭でも申し上げましたが、今回は上関原発関係の裁判が3件重なり、報告集会もそのすべての関係者が一堂に会して行われました。全体を俯瞰する、非常に貴重な機会で、ありがたいことでした。

この他にも係争中のもの、すでに終結したもの含め、上関計画をめぐっては非常に多くの裁判が展開されてきています。それは、裏を返せば、それだけ多くの論点について不正や問題をはらんだ計画であるということです。その一つ一つを争点化し、なし崩しを許してこなかった、関係者のみなさんの努力に改めて敬意を表したいと思います。

最後になりますが、神社地訴訟においては、同じ四代集落の住民が原告席と被告席に分かれて対峙する光景が展開されました。私は初めて目にしたのですが、とてもいたたまれない思いがしました。

■次回の予定
次回の公判予定は、6月13日(水)11:30から

今回と同様、祝島の埋立免許取り消し訴訟が11:00からありますので、傍聴を希望される方は10:30までにお越しくださいませ。

文責:小坂勝弥(原告の一人・京都在住)