2010年3月5日金曜日

第3回公判のご報告

 2010年3月3日14時より,山口県地方裁判所にて,第3回公判が行われました.
 35名を越える傍聴希望者が集まり,熱心に裁判の行方を見守りました.

 開廷前,弁護団代表の籠橋弁護士より今回の公判の概要が説明されました.
主要な争点は,やはり「原告適格」の問題です.長島・田ノ浦海岸における原発立地に伴う埋立に対して,原告がどのような利害関係を有するかということが認められなければ.訴えの利益なしとして裁判を受ける資格が与えられません.

 籠橋弁護士はこの原告の利益に関して,3つのポイントを説明されました.
 一つ目は,祝島島民の生活上の利益です.磯からの海産物を得るというだけではなく,その海辺を散策し,景観を楽しむといった利益も含まれます.建設計画地である対岸の田ノ浦は,祝島から見ると朝日が昇る場所です.鞆の浦の地裁判決にみられるように,近年,景観権をめぐる変化は著しいものとなっています.

 二つ目は,自然環境そのものがもたらす利益です.生態学者が「生物多様性のホットスポット」と絶賛する,瀬戸内海固有の希少な生態系が残される田ノ浦海岸では,その学術的な価値のみならず,長島の自然を守る会などの働きによって毎年多くの者がここを訪れ,その恵みを享受しています.かつては自然環境に対して,資源を取り出し,廃棄物を捨てるという直接的な使用価値しか認められていませんでしたが,今日では「生態系サービス」と言われるような多様な価値・便益が議論されています.

 三つ目は,原発の危険性,そのリスクによる被害です.
もんじゅの事件では,半径50㎞以内に居住する住民に原告適格が容認されているそうです.
 14時ちょうど,第3回公判が開廷されました.
 冒頭では公判の手続,次回のスケジュール等が確認され,今回提出された準備書面の説明が籠橋弁護士より行われました.
 本書面は,原告適格について,①小田急最高裁判決,②伊達火力発電所事件,③鞆の浦地裁判決などの事例,また,平成16年の行政事件訴訟法改正を受け,原告適格の基準に関する判断は徐々に拡大の傾向に有ることを主張しています.また,公有水面埋立法,環境基本法,環境影響評価法,瀬戸内海環境保全特別措置法,原子炉等規制法などの観点から,本訴訟において,原告に原告適格が在することを主張しています.

 今回は原告側の意見陳述として,祝島島民で豚牛の放牧や有機農業などの複合的な農業を営む氏本長一さんが意見陳述を行いました.氏本さんは,「生業としての農業と漁業を通して私たち島民は,山と海は不可分な関係であり,海と山からの恩恵でこれまで生きてこられたこと,これからも海と山の恩恵を受ける暮らしにこそ島の未来が開かれていることを理解しています」と述べられています.常に生き物との対話の中で暮らしておられる方独自の視点は,非常に感動的でした.
 詳しくは,意見陳述書をアップしていますので,そちらをご参照下さい.

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